院長メッセージ

“低血糖” 2006.01.21

院長メッセージ
2006年01月21日

ホノルルマラソンのご報告、大変遅くなりました。

 今回で4回目の挑戦です。1年目は4名、2年目7名、3年目10名、そして今年は18名とだんだん大所帯になってきました。このうちフルマラソン参加者11人(1型糖尿病3名)、10kmウォーク7名でした。患者さんの参加も次第に多くなり、一緒に達成感を味わえるのはとても嬉しいことです。

 4回目ともなると、だんだん欲が出てきて少しでも早いタイムでゴールしたくなってきます。今回はこれまでで一番トレーニングをしました。月間100kmを目標に走っていましたが、結局1年間で約900kmの距離を走りました。市民ランナーなら少ない距離ですが、忙しいなか必死で時間を作って練習した距離でした。

 12月11日早朝5時、まだ真っ暗なホノルルの空に大きな花火が打ち上げられ、マラソンがスタートしました。私達のグループでは私、D介、まこちゃんの3人以外はフルマラソン初挑戦です。皆胸をドキドキさせてスタートしました。 
 スタート前に血糖値を測ってみると、なんと414mg/dlでした。めったに出ない数値にかなり動揺してのスタートでした。その時点では、気分も悪くなく出足快調で10kmでのタイムは今までで一番早かったのです。「血糖も高いし、この調子だと20kmくらいまで補食しなくていいな。でも、こんなに高い血糖で運動するなんて危険だ。ケトアシドーシスにでもなって倒れたらどうしよう。やっぱりインスリンを持って走るべきだった。。。」走りながら頭の中は血糖のことがぐるぐる回っていました。いつもは10kmでゼリーを100kcal程度食べますが、高血糖だから必要ないと思い食べませんでした。15kmをすぎた頃から、急に足が重くなり、吐き気がしてほとんど歩いていました。周りのランナーからどんどん追い越されていましたが、私は足を前に出すのが精一杯でした。「やっぱりこれはケトアシドーシスに違いない。今の時点で300mg/dl以上の血糖値だったら本当に危険だ。リタイアしなければ。周りの人に迷惑をかけるわけにはいかない。。。」
 血糖を測ってみたら、予測外の74mg/dlでした。2時間くらいでこの血糖値の急降下。吐き気と倦怠感の原因は低血糖だとわかり、少し安心して、すぐにブドウ糖を食べようとしましたが吐き気でなかなか入りません。それでも少しずつ食べながら、そしてエイドステーションでのアミノバリューを飲みながら、歩いたり走ったりしてようやくハーフを過ぎました。ハイウエィの途中で、D介、マッチ、幸ちゃん達とすれ違い、元気をもらいました。皆速い速い!すこし元気をもらってハワイカイを何とか折り返しましたが、やっぱりきつい。血糖は90mg/dlと、もう低血糖ではないので大丈夫だと言い聞かせながら走りましたが、辛くて走る時間が持続しません。途中トイレに行き一息入れて、海を眺めながら「とにかく完走しよう。タイムは気にせずにあと10kmは楽しんで走ろう!」と気分を一新しました。
 
 おり返しのハイウエィで、Mさき、K子、Y子ちゃんそしてO先生ご家族とすれ違いました。初参加の彼女達は、足を引きずりながら必死で走っていました。そんな姿を見て、「辛いのは皆一緒。皆頑張ってるんだから。」とまた少し元気をもらいました。30kmを過ぎると今度は膝の痛みです。11月に走りすぎて膝を痛めていましたが、その痛みが出てきました。周りの人たちも足を引きずっています。あと10km、5km、3km、そしてようやく本当に長い長い42.195kmが終わりました。ゴール手前では、ウォークの仲間が手を振って待っていてくれました。そして、母の心配そうな顔もありました。

 昨年より27分遅いゴールでしたが、何とか無事に完走することができました。今回は血糖コントロールに苦慮した42.195kmでした。フルマラソンも4回目での油断、少し“血糖コントロール”をあまく考えていた失敗でした。糖尿病の専門家でありながら恥ずかしい限りですが、この失敗を繰り返さないよう今年もまた走りつづけます。

 糖尿病のある人生、常に“Try and Error”ですが、けっこう楽しいです。

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