インスリン治療中の運動

センター長メッセージ
2018年08月01日

厳しい暑さが続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
屋外で活動するにはつらい気候ですが、今回は運動のお話です。

近代的糖尿病ケアの父ジョスリン博士が“ジョスリンの3本柱”として重要視したとおり、食事療法とならんで運動療法は糖尿病治療に欠かせません。
しかし、実はインスリン治療中の方にとって運動が本当に血糖を改善するかどうかは未だに白黒がついていない状況です。インスリン治療の鬼門である低血糖が運動により増加して血糖コントロールが不安定になり、足を引っ張るからだと考えられています。
しかし、最近は持続グルコースモニター(CGM)が普及したため運動中いつでも自分の血糖トレンドをチェックすることができます。実際すでに多くの糖尿病患者さんがスポーツ中にCGMを使って低血糖予防とパフォーマンス維持に役立てていらっしゃいます。
そこで、南昌江内科クリニックで運動療法の担当をしている健康運動指導士の守田さんが、インスリン治療中の皆さんにCGMを活用して安全で効果的に運動を楽しんでいただくための科学的な根拠を創り出す臨床研究という形で挑戦しています。
※現在63名の方にご協力いただいております。ありがとうございます。
主な目標は、運動のアドバイスを行うことで運動への取り組みが増えることとインスリン治療の負担が減ることです。もちろん低血糖の有無を含めた血糖コントロールや体力の向上についても副次的評価項目として検討いたします。
私は統計学的解析の補助をしております。この臨床研究の結果、もし運動の好ましい効果が証明できれば患者さんにはもっと運動を身近に感じていただけますし、糖尿病療養指導の中での運動療法士さんの存在意義が高まります。追随する研究も生まれるかもしれません。

さて、糖尿病の方が運動する場合に留意すべき点は少なくありません。
まずは主治医に運動をしてよいか(可能ならどのくらいの強度までか)たずねましょう。
慢性腎不全の方や狭心症などの動脈硬化症を起こしたことがありまだ病状が安定していない方はもちろんのことですが、眼底出血しやすい状態の網膜症やたちくらみを起こすような自律神経障害も強度の高い運動は控えるべきです。

運動前後のインスリン量の調整と頻回の血糖測定、低血糖予防のための食事(補食)がもっとも重要です。
運動を始める前からインスリン量は適切に減量しておく必要があります。
運動強度や緊張具合いにもよりますが開始直後の血糖は1時間以内に100-200 mg/dLくらい急激に下降しすることがしばしばです。
そのため開始時に200-300 mg/dLになるように上げておくことが多いです。
また、運動中は1時間おきに血糖を確認しましょう。CGMやリブレなどは心強い味方です。血糖の上昇・下降の勢いから補食など取るべき対策をこころがけましょう。
さらに、運動日の夜は遅れてくる低血糖に注意してください。基礎インスリンの減量や就寝前の補食で予防しましょう。

他にも様々なトラブルシューティングがありますが、詳細につきましては以下の本に寄稿いたしましたのでご興味のある方はぜひ参考にされてください。

プラクティス・セレクション 今度こそできる! 糖尿病運動療法 サイエンス&プラクティス
プラクティス・セレクション 今度こそできる! 糖尿病運動療法 サイエンス&プラクティス

インスリン治療中でも万全の体制で臨めばきっと目標の運動が達成できるでしょう。
決して無理のないよう、そして日頃の練習がとても大事です。
運動でストレス発散、寝たきり防止にもなります。
大なり小なり、運動を日常に組み入れて豊かな糖尿病ライフを楽しんでください。

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最近やっと体調が戻ってきたので自転車を再開しています。
「Red Rider」は米国糖尿病学会(ADA)が行っている糖尿病啓発イベント「Tour de Cure」の参加者で糖尿病患者に与えられるサイクルジャージです。
留学中に参加したのでいただきました。デザインがかっこいいので気に入っています。
「I am not alone  (私は一人ではない)」「I Ride with Diabetes! (糖尿病とともに疾走る!)」などの心躍る言葉が記されています。
赤はADAのテーマカラーです。ちなみに国際糖尿病連合(IDF)は対照的に青です。

年度はじめの糖尿病自己管理

センター長メッセージ
2018年04月02日

4月に入り、福岡では桜吹雪が舞っています。
美しくも儚い和の美学が視界いっぱいに広がる様には高揚感を禁じえません。

さて、新年度がスタートし、新しい環境のもと期待と不安でいっぱいの方々も多いかと思います。
新しい目標や抱負を描いている方もいらっしゃるでしょう。
そんな緊張感でみなぎっている年度初めこそ、ぜひ健康を第一にお考え下さい。

「5月病」という言葉がありますね。
これは季節性の燃え尽き症候群です。

人間の体は緊張やストレスにさらされると様々なホルモンを分泌して対抗します。
急激なものに対してはカテコラミン(アドレナリンなど)が、慢性のものに対してはステロイド(糖質コルチコイド)が出て血圧を上げたり、炎症を抑えたりして危機を乗り越えようとするのです。

そうすると体が軽く、どんな困難にも打ち勝てるような気がいたします。
しかし、そのような無理は長くつづきません。
車や航空機のように過給状態を続けるとエンジンが焼き付いてしまいます。
人間のエンジンはなんでしょうか?
脳=こころですね。

5月病とはこころの疲れ、すなわち「うつ状態」と考えられています。
重症になると「うつ病」になります。

実は、先ほどの2種類のホルモンは血糖値を上昇させる作用も持っています。
糖は最も重要なエネルギー源ですから当然のことと言えるでしょう。
ですから、年度初めの今のように転職・転勤や引っ越しなどの大きな環境変化があった際には、血糖コントロールが悪化するケースが多いのです。
運動不足になりやすい梅雨や暑い夏場を迎える前に血糖コントロールが悪化すると、なかなか改善することが難しくなります。

解決策は「無理をせず、意識して休息をとること」につきます。
燃え尽きる前のこの時期から始めることが大事ですが、現実には年度初めの業務に忙殺されてしまう懸念があります。
できるだけ効率よく、少ない負担でできることを探したいものです。

一つの具体例として糖尿病臨床研究センターの取り組みをお示しいたします。

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机の上に机があるのがおわかりでしょうか。
これは立った状態でデスクワークをするためのスタンディングデスクというものです。

恐ろしいことに、長時間じっと座ったままの姿勢でいると血糖コントロールが悪化するばかりでなく、なんと入院や死亡の危険性まで上がるのです。
また、転倒骨折や関節障害さらには認知機能低下などの直接的な寝たきりの原因にもなります。
ですから、デスクワークを行う際には、30分毎に軽い歩行や運動をすることで糖尿病になる可能性が低くなり、糖尿病の方の血糖コントロールも改善すると推奨されています。

しかし、それも集中していたら忘れそうだし仕事も中断されるしということで、いっそのこと立ったまま仕事したらいいじゃないかという“スタンディングワーク”を推進する動きが出てきました。
スタンディングワークは欧州を中心に普及してきましたが、特にGoogleやFacebookなどの先進的なIT企業では早くから取り入れられているそうです。ずっとコンピューターと向かい合って座っていたからでしょうね。

仕事の効率もよくなりますので、無駄な残業を減らして休息時間をしっかりと取るのに有効な方法です。
新しい生活の始まりを機に、なるべく椅子に座らない生活をめざしてみるのも良いのではないでしょうか。

【参考文献】

Colberg, S. R. et al. Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care 39, 2065–2079 (2016). PubMed

Rockette-Wagner, B. et al. The impact of lifestyle intervention on sedentary time in individuals at high risk of diabetes. Diabetologia 58, 1198–202 (2015). PubMed

Bakrania, K. et al. Associations Between Sedentary Behaviors and Cognitive Function: Cross-Sectional and Prospective Findings From the UK Biobank. Am. J. Epidemiol. 187, 441–454 (2018). PubMed

Ekegren, C. L. et al. Physical Activity and Sedentary Behavior Subsequent to Serious Orthopedic Injury: A Systematic Review. Arch. Phys. Med. Rehabil. 99, 164–177.e6 (2018). PubMed

Song, J. et al. Sedentary Behavior as a Risk Factor for Physical Frailty Independent of Moderate Activity: Results From the Osteoarthritis Initiative. Am. J. Public Health 105, 1439–45 (2015). PubMed

1型糖尿病「高齢化社会にどう生きる?」

センター長メッセージ
2018年03月01日

日中は寒さもやわらぎ、春らしさを感じられる季節になってまいりました。
庭先のチューリップもようやく芽吹き、陽気をたっぷりと吸い込んで開花の準備をしているようです。

以前、糖尿病患者数が増加していると申し上げましたが、同時に高齢化も進んでおります。
最近よく「2025年問題」という言葉を耳にしますね。
団塊の世代が後期高齢者になり、超高齢化社会を迎えることで生じる介護・医療をふくむ社会全体の問題のことです。

当クリニックでも下図に示しますとおり、2型糖尿病だけでなく1型糖尿病の高齢化も進んでいます。

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1型糖尿病の治療は進歩し、合併症による死亡は大きく減少いたしました。
たいへん喜ばしいことですが、高齢化対策を急がなければならないようです。
当クリニックの2025年の高齢化率を予測してみました。
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ご覧のとおり、あと8年で現在の2倍に相当する17.5%の方が65歳以上になるようです。

対策と言っても何か特殊なことが必要になるわけではありません。
今でも糖尿病療養指導として皆様とともに行っていることを、より体系的に漏れなく、そして分かりやすく簡潔にお伝えしなければならない、ということです。

米国糖尿病学会の機関紙の一つである「Diabetes Spectrum」誌は、専門の医療者向けに治療を個別化するための戦略を策定するだけでなく、糖尿病自己管理をしている患者さんのための教育を支援する役割があります。
2014年にすでに“高齢1型糖尿病患者のマネジメント”という総説が掲載されていました。とても具体的で網羅された内容でしたので和訳して以下に掲載いたします。長くて恐縮なのですが、一度お目通しいただければ納得いただけるものかと思います。
医療者の方だけでなく、ご高齢の1型糖尿病患者さんを介護されている方もしくは老後が不安な1型糖尿病患者さんにぜひ読んでいただければ幸いです。

スライド1 スライド2 スライド3 スライド4

※画像の2次利用は構いませんが元文献の引用は必要です。
Dhaliwal, R. & Weinstock, R. S. Management of Type 1 Diabetes in Older Adults. Diabetes Spectr. 27, 9–20 (2014).

CGMという新しい血糖管理ツールの読み方

センター長メッセージ
2017年12月27日

早いもので今年もあと数日で終わろうとしております。
あわただしい年末行事や忘年会ラッシュでお疲れとは思いますが、そろそろ一息ついてご自身の健康のことを振り返ることができる時期でしょう。

アメリカ糖尿病学会の学会誌「Diabetes Care」の12月号は持続グルコースモニタリング(CGM)の特集でした。様々なCGMの有用性が報告され、今後の糖尿病治療の中で大きな役割を担っていくのだろうなと期待します。その中で、どのようにCGM結果を読み解くのかという課題があります。本特集では、「CGM使用に関する国際的コンセンサス」が提言されました。CGMから導き出される多くの基準値についてそれぞれ意義を詳細に説明したうえで、さらにこの順番で読んでいくと理解しやすいという手引きにもなっています。

CGM基準値について整理した表がありましたので日本語化してみました。

CGM結果の解釈にご興味のある方はぜひご覧になられてください。
※画像の2次利用は構いませんが元文献の引用は必要です。
Diabetes Care. 2017 Dec;40(12):1631-1640.

本年は8月から大変多くの方々にお世話になりました。
また来年も南昌江内科クリニックと糖尿病臨床研究センターをよろしくお願いいたします!

(追補)2018.1.25
元の図表の構成を忠実に踏襲しておりましたが、見やすいように関連した項目ごとに枠切りを変えて色わけいたしました。

こう見ると、基準の構成が「平均血糖>低血糖>目標範囲>高血糖>血糖変動>その他」の順になっていることがよくわかりますね。

命をいただく

センター長メッセージ
2017年10月07日

朝晩はずいぶんと冷え込んでまいりましたがいかがおすごしでしょうか。
農作物も実りの季節を迎えておりますね。

先日も実家から名産の栗が届いたところです。

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「食欲の秋」…みなさんにとってはもしかすると耳の痛いことばでしょうか?
「天高く馬肥ゆる秋」とも申します。
食べる側にとっては、寒くひもじい冬を迎える前に生き延びるエネルギーをしっかりと蓄えておかなければなりません。
その時手に入る旬のものをできるだけ新鮮な状態でいただくことは、生きているものにとっては当たり前のことです。

そんな厳しい生命の営みが、100年にも満たない環境変化で変わるはずもありません。
人間だけが、高次の精神力でその食欲を押さえつけることができると考えるのはやや傲慢な気がいたします。

でも、少しだけ、こころのどこかに留めておいてほしいことがあります。
私たちが日常食べているものは、例外なくかつて「生命であったもの」です。

 

命を粗末にしていませんか?

生きるために、そんなに多くの命を奪う必要がありますか?

 

私は農業や畜産業の盛んな田舎で生まれ育ったものですから、ときおり疑問をいだくのです。

たとえば米づくり…
稲の間に紛れ込んだ、ひえ・きびなどの雑穀を雑草として目の敵にする。
磨き上げるように精米してかがやく白米にする。

たとえば野菜づくり…
曲がったり、かたちの悪い野菜は出荷しない。
ハウスで重油をじゃんじゃん燃やし、季節感のない野菜を店頭にならべる。

たとえば果物づくり…
間引きして一つの実に糖分を集中させる。
濃縮還元して飲みやすいジュースにする。

そして、パックに入っている肉塊や切り身の魚…
もとはどのような姿形で、どこで生まれ育ったのか、どのようにして命を終えたのか、ご存知ですか?

過度の加工の末に元の食材がまったく分からないものもありますね。
真っ白なお砂糖や小麦粉、マーガリン(ショートニング)、化学調味料(アミノ酸類)…

いまさら現代的な食文化を捨てて原始時代にもどりなさいなどと申し上げたいのではありません。
旬のものがあふれているこの秋に、土や海や空を思い出させてくれる、命の豊かさを感じさせてくれる、そんな食べものを楽しむことは、そう後ろめたいことではないのではないでしょうか?

古代より、日本各地で、感謝の気持ちをあらわすさまざまな秋祭りや神事がとり行われる時期でもあります。
命をいただく重みを忘れないようにしたいものです。

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-実家の無農薬野菜たち

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-暑い空気と土のにおい…触って、重さを知る。

“At-Risk”な人たち 糖尿病になるのは誰?

センター長メッセージ
2017年09月22日

厚生労働省の調査によると糖尿病の疑いが強い人はとうとう1000万人に達してしまいました。
前回の調査では頭打ちになったかな、と思っていたところでしたがそのまま大台に到達です。

平成28年国民健康・栄養調査

ニュースでも話題となっており、お仲間が多くなったことに少しだけホッとされている通院中の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

糖尿病ではない方の反応はいかがでしょうか。
「10人に一人は糖尿病の時代…自分もいつかなってしまうのだろうか?」
それとも、
「自分は太ってないから関係ないや。」
でしょうか。

後者の方はお気をつけください!
ハワイを含むアメリカでこのような研究がありました。
BMI cut points to identify at-risk Asian Americans for type 2 diabetes screening.
Hsu WC, Araneta MR, Kanaya AM, Chiang JL, Fujimoto W.
Diabetes Care. 2015 Jan;38(1):150-8
http://care.diabetesjournals.org/content/38/1/150

BMIという肥満の指標があります。
体重(kg)を身長(メートル)の2乗で割ったら算出できます。
↓こちらで計算してくれます↓
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732

BMIは22が標準体重で25を超えると肥満、と言われていますが、実はその根拠は欧米人のデータを元にしています。
この研究はアジア系アメリカ人を対象にして、「BMIが23-24を超えたら糖尿病になりやすいから気をつけて!」と言っています。
人種の差が大きいのですね。
そして、私たち日本人はというと…なんと「22.8以上」が糖尿病発症リスクなのです!

えっ、私もあなたもあの人も危ない!?

いえいえ、落ち着いてください。
これはつまり、「体重は関係ないですよ」ということです。
※もちろん肥満は他の多くの病気をひきおこしますので太ることは体によくありません。
体重以外の原因のほうが大きいのです。
それは遺伝的なもの(=日本人であることも含みます)と、やはり”生活習慣”です。

心当たりのある方は前回ご紹介したKing先生の本をおすすめいたします。
『世界的名医が教える脱・糖尿病の最新戦略』

それでも、もし血糖値やHbA1cが健診でひっかかってしまった場合は…クリニックでお早目のおこしをお待ちしております。
このニュースで一つだけ嬉しかったのは、糖尿病の疑いが強い人の受診率がずいぶん改善しているということですね。

早期発見、早期治療。

合併症が出現するのを防いで、健康寿命を延ばすことにつながります。
そうすれば多くの薬が必要になったり、医療費がかさむこともありません。

このニュースをきっかけに、ご自分のからだと未来を今一度考えてみてはいかがでしょうか。

特に、40代の男性!
糖尿病の疑いが強い人のうち、半分しか受診されてないようですよー(。>﹏<。)
※他の年代や女性は7-8割受診

『世界的名医が教える脱・糖尿病の最新戦略』

センター長メッセージ
2017年09月11日

朝夕は少しひんやりと心地よい時期になりましたね。
私も南昌江内科クリニックに来てからはや1ヶ月少々がたちました。

皆さんはどのように日々の食事や運動を工夫していらっしゃいますか?
いろんな情報が飛び交うなかでいったいどれが正しいのか、お悩みのことと思います。

今日はとっておきの糖尿病関連の書籍を1冊ご紹介したいと思います。

 

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『世界的名医が教える脱・糖尿病の最新戦略』
ジョージ・L・キング
http://amzn.asia/5gJUFrH

私の留学時代の恩師であるジョージ・L・キング博士の著書です。
海外の本…ましてや肥満大国アメリカの本なんて!とご心配かもしれませんね。
でも実はキング博士はアジア系アメリカ人で、アジアの伝統的な田舎料理を推奨しています。
びっくりされるかもしれませんが、悪玉の脂質(あぶら)を減らして、1日全体で必要なエネルギーの70%を炭水化物から摂取するように勧めています。
近ごろは「低糖質ダイエット」が大流行ですが、長期的に見ると悪玉の脂質が多くなってしまい、動脈硬化症などの病気を招く危険があるのです。
この本の中で、キング先生は炭水化物の「質」の方が大事で、精製されたピュアな「糖質」ではなく「食物繊維」を多く摂るようにと言っています。

そのほかにもたくさんの運動の方法が具体的に紹介されています。
ご興味のある方はぜひ読んでみてください!

糖尿病臨床研究センターの理念とセンター長就任のご挨拶

センター長メッセージ
2017年09月01日

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皆さん、はじめまして!

8月から南昌江内科クリニックの3人目の医師として赴任いたしました前田泰孝と申します。
長らく診療の傍らで医学研究と教育活動に携わって参りましたが、ご縁があって当クリニックに骨を埋めることにいたしました。
実は私も南先生と同じように1型糖尿病でインスリン療法を行っています。医学生になって間もない21歳の成人発症でした。それまで希望していた外科系医師への道は、そのときなんとなく絶たれた気がしました。進路に悩んでいた私は主治医の岡田朗先生から九州大学の井口登與志先生の存在を紹介され、糖尿病合併症研究の面白さに惹かれました。旧第三内科の先輩方はみな指導熱心でしたし、仕事のできる後輩たちにも恵まれました。そして、糖尿病専門医になり、同じような1型糖尿病の医師の方々と出会ったことで、自分の体験を患者さんへ語る機会も増えてきました。

私は今もしも、「糖尿病でない人生を選んでも良いよ」と言われたら、すこしためらいます。いろいろなハードルを乗り越えてきたことで得られたものがけして少なくないからです。病気はまちがいなくハードルであり、必要のないものです。しかし、人生を幸せに生きることはどういうことかを教えてくれる先生でもありました。そして、私を助けてくださる人々と科学の進歩、それらをささえている豊かな自然への感謝の念を育んでくれました。

糖尿病とともに生きるためには様々なハードルがあり、それを乗り越えるための支援体制が必要です。子どもの時に発症した場合には、学業や部活動、そして家族・友人関係などに支障を来さないように糖尿病サマーキャンプという強力な支援体制があります。一方で、私のような20~30代発症の糖尿病患者さんは、就職や結婚などの人生の大きな転機を迎える大切な時期にあたり、十分な医療を受ける余裕がないこともしばしばです。病気に対する偏見や心ない差別も依然として根深いものがあります。現在の若年発症者をとりまく社会的環境を鑑みると、これらのハードルに打ち勝っていくためにはあまりに患者さん本人の努力に依存しすぎているのではないかと危惧しています。また、近年は糖尿病治療の進歩により生命予後は飛躍的に改善したものの、患者さんの高齢化が問題となっています。罹病期間が長くなると、どうしても血管合併症の頻度が高くなります。さらに、認知症や身体機能の低下にともない、インスリンなどの服薬がうまく行かないケースも増えています。家族の助けだけでなく、私たち医療者からのサポートと、それを支援する行政への働きかけが、いま必要です。

しかし、残念ながら医療資源は無限ではなく、地域や個人の経済力・社会的事情に左右されてしまいます。今は最適な医療技術を効率よく、患者さんの身近に届けることを求められています。まして、『どう考えても食べ過ぎちゃってるけど糖尿病とか肥満とか気にしないで良くなる薬作った!月にウン万円かかるけどね…』なんて、とても許されない時代なのです。また、生活習慣病と名付けられた糖尿病は、実際には1型や遺伝性のもの、妊娠や他の病気が原因となるものなど、きわめて多岐にわたる病態の複合体です。その「高血糖症」をコントロールして血管合併症を防ぎ、正常血糖の人たちと同等の健康な人生を歩んでいただくのが糖尿病治療の最終目的です。私たち医学研究者が長年にわたって培ってきた糖尿病合併症の予防と治療の技術がもうすぐ実を結ぼうとしています。多少血糖コントロールが悪くても、重篤な合併症に苦しむことのない未来が来るかもしれません。病気のためだけに生きているなんて本末転倒ですし、そのようなことは誰も望んでいません。

このたび、当クリニックに新しく「糖尿病臨床研究センター」という部門が設立されました。近年、マイコン時代~インターネット(IT化)時代~ソーシャルネットワーク時代とコンピュータ技術の進化が医療を大きく変えてきました。そして、これからの十数年間で、人工知能(AI)技術の進歩が医療者と患者さんの関係をさらに激変させることが予想されています。中には、AIが医療現場から“人間らしさ”を奪うのではないかと心配する人々もいます。確かにAIは人間の能力を模倣し凌駕するでしょう。特に、チェスや囲碁で人間のチャンピオンに勝利したように、「過去のデータから将来を予測する能力」に関してはすでにAIの方が圧倒的に優っています。しかし、いくら心配しても時計の針は巻き戻りません。それより、来るべき変化を積極的に受け入れて、いち早く正しい道へ導くことの方が重要ではないでしょうか。AIといえど、人間が正しい情報を与えなければ誤った解答を示すことは想像に難くありません。正しい医療の情報は、正しい訓練を受けた人々が時間をかけて紡ぐ医療現場にしかありません。そして、AIが得意な未来を予測する能力は、私たち医療者が「過不足のない適切な医療」を行うために欠かせないのも事実なのです。

このような変革の時代にあって、自分なりに診療と研究の関係を変える必要性に気づきました。大がかりな研究機関で行われる壮大なプロジェクトの重要性は語るに及ばずです。しかし、大切な協力プレーヤーである創薬・検査技術に携わる国内外の企業と話をするうちに、彼らが私たち臨床家に求めているのは、”リアルワールドのデータに裏付けられた新しいアイデア”だとわかりました。大学病院のような研究機関だけではなく、糖尿病専門クリニックから情報を発信することが、より適切な糖尿病の医療につながるという確信を得たのです。

最後に、糖尿病とともに生きる難しさと、生きることのかけがえのなさを伝えていくことが私の新しい使命です。私たちが提供する医療を受け入れてくださる皆さんとの信頼関係が何よりも重要だからです。「信頼とは成長の遅い木である。」の格言のとおり、時間がかかることもあるでしょう。どんな忍耐よりも楽しさや嬉しさというポジティブな感情がかえって近道のこともあります。また、上手に血糖管理を行うことで、自己実現という高次の悦びの境地も体験できます。どうか皆さんが豊かな糖尿病ライフを送れますように!

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