院長メッセージ

TEAM DIABETES JAPAN 2006.12.30

院長メッセージ
2006年12月30日

“Changing Diabates”(糖尿病で変えてきたこと、変えていきたいこと)

 11月14日、世界糖尿病デーに、インスリンの製薬会社である、ノボノルディスクファーマが“Changing Diabetes”という趣旨でエッセイを応募しました。そのときに応募した私の作品が優秀賞を受賞しましたので、ここでご披露したいと思います。
私のクリニックに通院されている患者さんたち3名も優秀賞を受賞されましたので、是非お読みください。それぞれにご自身の想いがたくさんこめられた感動作です。

http://www.novonordisk.co.jp/documents/article_page/document/PR_06_essay.asp

 “TEAM DIABETES JAPAN”

14歳の夏、思春期の真っ只中に私は1型糖尿病を発症しました。その頃は、「大好きだったスポーツができなくなるかもしれない、友人と同じ様に生活できなくなるかも知れない、将来元気でいられるだろうか」と不安でいっぱいでした。「どうして私だけがこんな病気になったの?どうせ私は糖尿病だから。。。」と何をするにも自分ができないことを糖尿病のせいにして逃げてきました。
 高校生になって、主治医の半ば強制的な勧めでサマーキャンプに参加しました。そこでは私よりもずっとずっと小さな小学生たちが、元気ではしゃいでいました。中学生や同じ高校生たちは、小さな子供たちの面倒をよく見ていました。皆同じ病気を持ちながら、大変なことはたくさんあるけれど、糖尿病から逃げず一生懸命に生きていました。そんな姿を見て、それまでの自分が恥ずかしくなりました。サマーキャンプに参加して、初めて“糖尿病をもつ人生”と向き合えることができるようになりました。そして“将来の夢”を持つことができたのです。

“医師になって、糖尿病を持つ人の役に立つことができるような仕事をしたい。”

 医師になることを目標に、高校生の時は必死で勉強しました。念願の医学部に合格できて、大学生活は、勉強はもちろんですが、「糖尿病でできないことは何もないんだよ。」という主治医の言葉を信じて、スキー場でのアルバイトやアメリカでのホームステイも経験しました。両親にはいつも心配をかけていましたが、いろんなことにチャレンジして、ひとつひとつ自分に自信をつけていくことができました。

 糖尿病を発症して30年、そして医師になって20年目になります。この間、糖尿病から逃げ出したくなった時、医師を辞めたくなった時、生きる希望を失った時など辛いこともたくさんありました。でも私を愛してくれる家族や友人の支え、素晴らしい先生方との出会い、そして糖尿病治療の進歩のおかげで、30年経った今でもこうして元気に過ごしています。糖尿病になったおかげで、命の尊さ、健康の本当の大切さを知ることが出来ました。   
 現在は糖尿病専門医として多くの糖尿病の方と接していますが、その中にはインスリンをしながら元気に活躍している方もたくさんいらっしゃいます。そんな患者さんたちから刺激を受けて、私も何か出来ることはないかと考えていた頃、ホノルルマラソンを完走されたある糖尿病専門の先生からの一言が私の心を動かしてくれました。
「先生も挑戦してみない?きっと出来るよ。」
それまでも健康な人と何ら変わりない生活をし、スポーツも楽しんでいました。5kmくらいのレースには参加していましたが、フルマラソンは、インスリンをしている自分の体力では到底無理だろうと自分で自分に限界を作っていました。でもよく考えると、これまで糖尿病でできないことは何一つありませんでした。
それから1年2ヶ月、毎月100km走ることを計画しトレーニングをはじめました。診療や講演、研究会など忙しい時間の合間をぬって、 “ホノルルマラソン完走”を目標に、トレーニングが楽しみにもなりました。低血糖時の補食や高血糖時のインスリンの調整などやらなければいけないことはいくつかありましたが、自分の体を観察できるよい訓練にもなりました。

 2002年12月8日、初めてのフルマラソン完走を成し遂げた時は、感動と涙、そして全ての方たちへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。そしてこれから生きていくうえでの更なる自信にもつながっていきました。この感動を再び味わいたくて、それから毎年参加しています。そして、仲間や患者さん達にも是非この感動を味わっていただきたいと思い、体験談を話していく中で、年々一緒に参加するメンバーも増えてきました。仲間が増えることで、感動もまた違ったものになってきています。
“糖尿病”だからと言って出来ないことはありません。自己管理さえきちんとすれば、病気がない人より、むしろ元気で有意義な人生を送ることが出来るのです。この感動を一人でも多くの糖尿病を持つ患者さん達に味わっていただきたいと思い、全国的に糖尿病の方や医療者に呼びかけて“TEAM DIABETES JAPAN”を設立しました。

 元気な糖尿病の方たちが日本中に増え、有意義な人生を送ってくださるよう、そして
「糖尿病の人って、元気で魅力的ね。」
多くの人々が、そんな風に思ってくれる社会を作っていきたいと思っています。

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